今回、我々が挑戦するのは釧路川だ。
北海道のカヌーイストなら誰もが一度は下ってみたいと思う川ではないだろうか。
いつかは行きたいと思っていた場所にやってきた。
コースについて
釧路川は屈斜路湖から釧路湿原を通り、岩保木水門で釧路川、新釧路川に分かれ太平洋に注ぐ川だ。
(私が釧路に住んでいた頃、釧路川→新釧路川、旧釧路川→釧路川となったので名称は混乱しがち!!)
本当は屈斜路湖から釧路町まで二泊三日で下りたいんだけど、摩周大橋(弟子屈町)から瀬文平橋(標茶町)までの間はカヌーでの航行が禁止されている。
またゴール地点もカヌーポート岩保木水門駅にしたいのだが、岩保木水門まで行くと汽車が遠い。
遠矢駅までは5.2kmもある。
というのも、カヤックで川下りをする場合、どうしても別の交通手段がもう一つ必要になる。
美々川のように、カヤックで上流に向かって進める川であれば問題ないのだが。
今回は汽車を利用する事にした。
釧網本線である。
この鉄道は釧路川と平行に走っているため、利用しやすい。
結果、我々が計画したコースは、標茶町の富士カヌーポートから細岡カヌーポートとなった。
距離にして32km。今回は宿泊なしでいける距離にする。
それでも、我々のカヤック歴では最長コースである。
正直、時間の予測がたたない。
途中リタイアする場合に備えて、カヌーポートと駅の位置関係も調べておいた。
五十石橋カヌー発着場
五十石駅は廃駅なので汽車で戻ることはできない。
しかし、さすがにここでリタイアはないだろう。
カヤヌマカヌーポート
茅沼駅まで1.2km程度。直線距離はもっと近いが畑を迂回してくる必要があるようだ。
スガワラカヌー発着場
道道1060号が通行止め。(2020年9月現在)
二本松橋が損壊しているらしいので歩きでも通れるか分からない。
歩けたとしても塘路駅までは4.7km。
車でカヤックの回収には行けない。
フタマタカヌー発着場
塘路駅まで800m程度。
フタマタから少し遡上して塘路湖の塘路元村キャンプ場で一泊ということもできる。
塘路元村キャンプ場から塘路駅までなら1.3km程度。車を持ってくるのも簡単そうだ。
ということで・・・
カヤヌマカヌーポート、フタマタカヌー発着場がリタイアしやすい場所ということになる。
とは言っても、ほとんどが湿原の中なので、何かあってはどうにもならない。
何より、湿原は立ち入ることが禁止されている場所がほとんどだ。
特別保護区は立ち入り禁止だし、国立公園区域も立ち入るのは控えた方がいいだろう。
詳細に関しては環境省の釧路湿原特別保護地区に関する資料を見てもらえばわかるが、
「五十石橋カヌー発着場を過ぎたらカヌーポート以外は降りたらダメ!」と理解しておいた。
ということで、何もないよう安全第一で進むのが絶対である。
怪我した時の応急処置対策だけではなく、カヤックに何かあった場合の補修など応急処置も必須だ。
それでもダメな場合に備えて、通信手段の確保も重要。バッテリーとか。
計画
まず車、カヤック、汽車での行動予定を決める。
車はゴール地点の細岡カヌーポートに置いておく想定で計画を立て始めた。
当然ながら、事前にスタート地点にカヤックを置いておく必要がある。
前日、標茶の河原にカヤックを置いてきて、一晩そのままにしておくというのは不安を感じる。
かといって、朝、置いて細岡に移動となると、汽車の時間に間に合うかが不安。
午前中の汽車は6:26の一本のみ。それを逃すと次は午後だ。
朝バタバタと出発すると、何か失敗しそう。忘れ物とか。
早起きすればいいだけなんだけどね。
あと、道東の朝って霧がすごいので、少し遅めに出発したいというのが本音。
ということで、我々は別のパターンに変更した。
スタート地点に車を置き去りパターン。
川下のゴール地点に車を停めておくのをパターン1として、スタート地点に車を置き去りがパターン2にすると…
こんな感じ。
パターン1の方がカヤックを終えた後は車に積むだけなので楽なんだけどね。
帰りの汽車の時間を気にしながらというのはストレスなんだけど、午後は14:38を逃しても16:27もあるし、遅くなりそうなら先ほど書いたリタイアポイントで戻ればいい。
まとめると・・・
1.前日に標茶に行き、宿泊。
2.車は標茶に置いたまま、カヤックで出発。
3.ゴールしたら細岡カヌーポートにカヤックを置いたまま、汽車に乗りスタート地点の標茶に戻る。
4.車で細岡カヌーポートまで来て、カヤックを回収。
出発まで
計画通り、前日の夜、標茶まで来ておいて仮眠。
朝起きると、霧っぽい。
道東の朝って雰囲気だ。
陽が昇り始めれば晴れていくだろう。
昨夜、釧路市内で買っておいた朝ごはんを食べ、準備をする。
出艇場所などの調査はしていないので、とりあえず開運橋に向かってみる。
Googleマップで確認するとカヌーポートが二ヵ所あるようだ。
川下側の”カヌーポート富士駅”を見てみる。
看板はあるのだが、草木が生い茂っていて川岸に入っていけなさそう。
もう一か所の”富士カヌーポート”が指し示す付近を探す。
美々川のカヌーポートのように、整備された場所があるわけではないようだ。
準備が整ったら貴重品だけ持って、車を駐車場に移動。
カヤックに歩いて戻る。
川下り
準備が整い出発である。
川に入ってみると、思っていたほど冷たくはない。
9:00出発。
本物のカヌーポートは別にあって、川からなら発見できるかもと思って探したが、それらしきものは何もなかった。
まだ霧っぽい。
ちょっと小雨のような感じもする。
国道が近いが、それほど車の音が聞こえるわけでもない。
7kmを45分ほどで進んだらしい。
このペースであれば、4時間かからないぐらいかな。
汽車の時間は14:38なのでもう少しゆっくりでもよさそうだ。
橋を通り過ぎると、すぐ左手に五十石橋カヌー発着場がある。
ツアー会社のスタッフらしき人がいたので写真は撮っていないが。
国立公園、鳥獣保護区に入る。
程なくして鹿と遭遇。
思わず大きな声を出してしまい、鹿を驚かしてしまった。
警戒しているようで、お尻を向けていつでも逃げられる態勢でこちらをうかがってくる。
1984年に完成した新水路区間まで来ると川が直線になる。(沼幌新水路)
“茅沼地区旧川復元”ということで、昔の川の流れに戻されているらしいが、まだまだ直線区間は残っている。
古い地図だと茅沼地区の川の形が違うので注意。
GoogleMapの航空写真を確認すれば、新水路の名残りを見る事ができる。
川の先の方まで見通せるので、前方に集団が見えた。
どうやらツアーらしい。結構ゆっくり進んでいるようだ。
あっという間に追いついてしまった。
って、これ、何の行列ってぐらいの大所帯ツアー。
抜こうにも、どうすればいいのか…、と悩む。
“大名ギョウレツアー”
ツアーのゴール地点までどれぐらいあるのか分からないので、先に行かせてもらう。
挨拶をしながら一艇ずつ抜かしていく。
ようやく全艇抜かしたなって思ったら、上空から異音が。
見上げると、ドローン!!
どうやら先ほどのツアーを撮影しているらしい。
ツアーの少し前方から撮影しているので、我々のちょうど真上にいるようだ。
ずっと真上にいる。
ずっと真上からドローンのブーーンって音が響く。
うーん、なんだかなぁ。
カヤヌマカヌーポートに来ると、ドローンの操縦者がいた。
たぶんスタッフで、ここが大名ギョウレツアーのゴール地点なんだな。
ここから先は、静かに進めそうである。
ここからスガワラカヌー発着場までは、道路も鉄道も離れるため、本当に湿原の中を進むことになるようだ。
誰もいない釧路川を下る。
突然、こんな状態で流木があると、一瞬「通れるのかな?」って思う。
常にGPSで現在位置を確認しているわけではないので、突然、スガワラカヌー発着場らしきものが出現。
「あれ、今のってカヌーポート?!」と焦る。
やはりここも、カヌーポートっぽくない。それほど整備されているわけではないようだ。
たまに人工物がある。
ソーラーパネルを備えた、これは何だろう?
川岸を流れによる浸食から守るための杭柵の跡かな?壊れてるようだけど。
この後、カーブを流れに乗って進んでいたら川の真ん中にあった流木にかすった。
危ない危ない。
こういう油断が事故に繋がるんだな。
損壊により通行できない橋らしいが…。
遠くから「カヌーだ!」って声が聞こえた。
探してみると、少し高い位置に人が。
パドルを振ってみた。
後で調べてみると、二本松展望地という場所らしい。
これがカヌーポートかなぁ。Googleマップの位置と少しずれているが、これかなぁ。
Google Mapが指し示す場所は、このように護岸工事がされていてカヌーポートではない。
塘路湖も行ってみたいが、今回はこのまま川を下る。
これで事前に調べていたリタイアポイントは通り過ぎることになる。
残り7.5km程度なので1時間ぐらいでゴールが可能な所まで来ている。時刻は12:30。
汽車の時間までも余裕がある。
後は無事ゴールを目指すだけだ。
少し近付いたら、ダッシュで逃げていった。
結局、この川下り中に出会った鹿は10頭ほど。
しかも親子が多く、可愛い小鹿を何度も見る事が出来た。
途中リタイアすることもなく、無事に細岡に到着!!
ここは木で作られていて、整備されたカヌーポートだ。
写真や動画を撮りながらゆっくり下っても、14時前には到着。5時間程度の旅だった。
汽車の時間の14:38まで、まだ余裕があるのでとりあえず安心。
このカヌーポートはツアー会社の利用が非常に多いので、邪魔にならないように端の方にカヤックを置いておく。
撤収作業
カヌーポートから徒歩で細岡駅へ向かう。250m程度なのですぐ。
駅に着くと、人が多い。車も結構駐車されている。
何だろう?と思っているとノロッコ号がやってきた。
ノロッコ号の写真を撮るために人が集まっていたようだ。
ノロッコ号では標茶に行けないので見送る。
乗客に手を振ると振り返してくれた。
「標茶まで750円もするの!?」って驚いてしまったが距離で計算すると普通なのかな?
駅で切符を買うのではなく、乗り込むときに券を取り、降りる時に払うタイプ。
バスのような感じ。このスタイルはニセコ方面で経験済み。慣れたもんだ。
ちなみに、交通系ICカードは使えない。
道内でICカードが使えるのは実は札幌圏のみという事を最近知って、ちょっと驚く。
(小樽、苫小牧、医療大学、岩見沢までらしい)
カヤックを漕いでいる間は不要だったが、持ってきたマスクをする。
今度は車で標茶から細岡へ。
ここから見える釧路川は今日漕いだ場所ではない。
いつか漕いでみたいけど、この区間を下るには車が2台必要だな。
釧路でレンタカーを借りればいいのか。
夫婦なので2人いるわけだし。
…などと、次回の野望?を考えながら
カヌーポートに戻り、カヤックを車に積み込む。
コメント
前からバイクにカヤックを積んでやってみたいと思ってました。出来れば屈斜路出発でやりたいと思ってますが、ポートからバイクまでカヤックを運ぶのは大変そうなので引っ張って運べる車台みたいなものがあったほうがいいですね。