この日は思い立って久しぶりに白老町へ。
一番の目的は、以前から気になっていたあるお店へ行く事である。
かに太郎
気になっていたお店というのがこちらの「かに太郎」というカニ飯屋さん。知人に教えてもらって知ったのだけど、数年前にテレビで紹介されたり、SNSでも密かに話題になったりしていた。さっそく行ってみる。
ここの何が気になるってまずこの外観。

国道36号線沿いにあって、夫は昔からこの建物の事は認識していたみたい。
ただ「気になる“廃墟”」として記憶していたらしい(失礼!でもまあ、確かに…)。
それが実は今も営業中だったと知って、これは行ってみなくてはという話を前からしていたのだ。
90歳近いお爺さんが一人でやっていて、メニュー表はあるけど実際に提供しているのは500円のカニ飯のみ!無くなり次第終了なので、早めに行った方が良さそう。ちなみに開店は11時から。
到着すると、お爺さんが窓際で横になって寝ているのが外から見えた。
これってもしかしてもう終わった…?それとも今日は暇だっただけ…?
とりあえず少しばかり勇気を出して中に入ってみる。お昼寝中ごめんなさいと思いながら「すいません、今日ってまだ大丈夫ですか?」と聞いてみた。
すると、お爺さんが起きてきて「あら、2人?どうぞ〜。」と何とも穏やかな声で案内してくれた。
前情報ありで行ったので特に抵抗はなかったけど、なかなか味があり過ぎる店内である。

メニューは一択なのでもちろん聞かれる事もなく「ちょっと待っててね〜」と作り始めるお爺さん。

「どこから来たの?」「前にも来た?」「ずっと前に来たよねぇ?(来てないのよ)」「さみしいところでしょ?」「来てくれてありがとね〜」と、終始穏やかなボイスに癒されながら待っていると…

来ました、500円のカニ飯!

いや、普通に美味い!味噌汁もなんか美味しかったなぁ…。今この時代に500円でコレはかなりお得だと思った。
建物の周りは廃材だらけでこんな感じだけど、それも色々と理由があるみたい。

このお店の歴史やお爺さんの人柄について、ほかのサイトでも書かれているし、もしかしたらテレビで取り上げられた時の映像とかもあるかな?ぜひちょっと調べてから、お爺さんが元気なうちに行ってみる事をオススメしたい。
ちなみにここのすぐ近くには「網元感動市場 かに御殿」という建物もあるのだけど、強烈なインパクトで横を通り過ぎるだけでもかなり圧倒されてしまう…。

今回は中には入らなかったけど、新鮮な海産物やお土産を販売していたり、レストランなんかもあるみたい。

この巨大なクマとサケ、制作費は2つ合わせてなんと約1億円だとか…!白老ってなんか、個性的(どころではない?)なお店が多い町かもしれない…。
魚卵人/株式会社スイコウ
続いては少し移動して虎杖浜へ。
白老・虎杖浜といえば“たらこ”が有名で、販売しているお店がいくつもある。
その中でも、地元の人に勧められて以前行ったのが「株式会社スイコウ」という水産加工会社に併設されている直売所「魚卵人(ぎょらんちゅ)」。ここのたらこがとても美味しかったので、今回も行ってみる事に。
到着。こぢんまりとしているが、たらこ以外にも様々な海産物が販売されている。

そして購入したお目当てのたらこがこちら。通常のたらこ・昆布明太子・わさびたらこの3種類があって、それぞれ量り売りで1本から購入可能となっている。

今回は通常のたらこと昆布明太子を購入。やっぱりここのたらこは美味しくて何度でも買いに来たくなるんだよね。
スイコウの入口付近に珍しい鳥がいたので写真を撮ってみた。カラスのようなシルエットだけど白い部分もあり、翼は青く光っている。

調べてみたら「カササギ」という鳥だった。カササギという名前だけど、サギ科ではなくカラス科。北半球の様々な地域に生息している鳥だけど、北海道では1980年代に室蘭や苫小牧周辺でみられるようになって、そこから徐々に道内でも分布を広げているみたい。
どうやって北海道に移入してきたかは長い間謎だったけど、苫小牧の個体群のDNAとロシア極東のものがほぼ一致して、ロシアから来た事が判明。でも、カササギは長距離の飛行が苦手なので、ロシアから貨物船に乗って来たんじゃないか説が提唱されているらしい。
船に乗って来たと思ったら、ちょっと可愛くて面白い。
たまたま見かけてすごく気になったので写真を撮ったのだけど、調べたところ虎杖浜の春の風物詩で3月末頃~4月末頃に見られる「すき身干し」というものだった。「すき身」とは3枚におろしたスケトウダラの身を塩漬けにして天日干ししたもので、ひたすら手作業で干していく様子はローカルニュースになったりする事もあるみたい。

今ではかなり限られた場所でしか見られないけど、昔は様々な地域でこの光景が見られたんだとか。実際見ると干されてる枚数もすごいし、圧巻の光景。全然知らなかったな〜。

ついでに改めて確認してみたけど、スケトウダラとスケソウダラは同じもの。で、これの卵巣がたらこ・明太子になっているって訳だ。
ウポポイ(民族共生象徴空間)
続いては「ウポポイ(民族共生象徴空間)」へ。ゴールデンカムイを読む前に一度行っているけど、読んでから「もう一回ちゃんと行きたい!」と思っていた場所。今日は特に計画していた訳じゃなかったけど、せっかく白老まで来たので行ってみようという事に。
チケットを購入。通常の入場料は1200円だけど、14時以降の入場だと半額の600円!
この半額チケットの販売は2024年の10月から始まっていたみたい。前回来たのは2022年で当時は無かったので知らなかった!

中に入るとネコバスみたいな可愛いバスが。

2023年9月から運行しているようで、これも前回来た時には無かったもの。園内の短い距離を往復していたけど、歩くのが大変な人には助かるよね。あと単純に可愛いから乗りたくなるってのもあるよね。
チセが並ぶ伝統的コタン。
アイヌ語で“チセ”は「家屋」、“コタン”は「集落」の事。

チセの横にある“へペレセッ”=子熊の檻。“へペレ”が子熊の事。

春先に捕獲した子熊をチセで人間の子供と同様に大切に育て、ある程度成長するとこの檻に移して1〜2年ほど育てる。熊は神の国からの遣いと考えられていて、育て上げた後に魂を神の国へ送り返す「イヨマンテ(もしくはイオマンテ)」という盛大な送り儀礼を行うらしい。
へペレセッの隣には“プ”=食糧庫。高床につくられていて、ネズミ返しが付いている。

“チプ”=丸木舟。このチプは実際にウポポイの職員さんが製作したものだそう。別の場所にただいま製作中のチプもあって、一人の職員さんが本当に手作業で木を掘っていた。

干している鮭も本物。匂いを嗅いでみたけど、確かに本物だった。

“マキリ”=小刀。

マキリは木彫りや狩猟、料理など様々な用途で使われるもの。アイヌの人々の生活に欠かせない道具だ。
木製の柄と鞘にはそれぞれ独特でデザイン性の高い装飾が施されている。
“チェプケレ”=鮭皮の靴。大人の靴一足作るのに鮭4匹の皮が必要だそうだ。

チセでのプログラムが始まった。アイヌ語についてやコタンについての小話があり、その後にムックリという楽器の演奏や歌・踊りが披露された。

以前来た時はもっと広いホールでのパフォーマンスを観たけど、家の中で間近で観るというのもかなり良かった。声や踊りの迫力が本当にすごくて、短い時間ではあったがとても感動した。
様々な展示物をみていく。まずは衣服から。
“アットゥシ”=オヒョウ等の樹皮の内皮の繊維を織ったアイヌの反物。

作るのにとても手間と時間のかかる衣服で、日常着だけでなく儀礼のときにも着用されていた。
また、乾くのが早いため海での作業にも重宝されたそう。

ウイルタやニヴフの衣服。ウイルタ民族・ニヴフ民族は樺太アイヌとともに樺太で生活していた少数民族で、第二次世界大戦後にはその一部が北海道や本州に移住している。ちなみに、樺太アイヌは明治時代に樺太から日本本土へ強制的に移住させられたアイヌ民族である。

さすがに樺太なので雪国仕様となっており、かなり暖かそうだ。
儀礼における女性の装い。白い部分と柄の部分の組み合わせが面白く、とても美しい。

儀礼における男性の装い。刀と刀掛帯(かたなかけおび)がカッコイイ。

シャマンと言われる特殊な能力をもつ人が使う太鼓。太鼓を打ち鳴らして、歌ったり踊ったりしながら神と対話して神の言葉や意思を伝えるそう。

やっぱりゴールデンカムイに出てくるものばかりなので知っているものが多い!
「あ、アレの実物だ!」って感じで、前回来た時の100倍楽しめた。
この記事も実際に展示品のところに書かれていた説明とゴールデンカムイからの知識を半々くらいで織り交ぜて書かせてもらっている。
さて、閉園時間も近付いてきたし、そろそろ退散しよう。
ここに載せた以外にも色々と見て回って、午後からで短時間だったけれどかなり充実感があった。プログラムはもう終盤だったのでチセでのパフォーマンス以外は観られなかったのが少しだけ残念。
でもチケット半額だったしね。当たり前だけど早い時間に来て正規のチケット料金を払えば、様々なプログラムを観たり体験に参加したり出来るって事だ。
駐車場へ向かう途中、入口近くの「sweets café ななかまど イレンカ」というお店の店員さんに声を掛けられる。
「今ならアップルパイ1個につきチーズケーキ1個サービスで付けますよ。いかがですか〜?」
閉店間際のラッキーなやつだ。か、買います…!

「パピリカパイ」という名のアップルパイ。帰宅前のおやつにさせてもらったが、冷めていても結構美味しかった!

サービスでもらったのは北海道のクリームチーズと白老町の卵を使用したカップチーズケーキで、写真は撮っていなかったけどこれも美味しくてペロッと食べてしまった。
ななかまどって、確か白老のパン屋さんと同じ名前だよなぁ。

と何気なく思っていたけど、本当に同じ店だった。
















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